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記憶を、資産に変える。

AIとの対話から生まれた、価値ある情報を残したいという思い。人が変わっても、AIが変わっても、企業の知識や経験を守り、使い続ける。お金やモノだけでは測れない、これからの企業の資産について考えます。

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積み重なった紺色の紙の層と、未来へ続く白と黄色の道で、記憶や経験の継承を表す抽象イラスト

JOURNAL 02

お金やモノだけではない、企業価値の未来。

ChatGPTを使うようになって、仕事の進め方だけでなく、自分自身の考え方も少しずつ変わってきました。

分からないことを調べる。行き詰まった問題を相談する。思いついたアイデアについて、何度も意見を交わしてみる。

そんなやり取りの中で、それまで知らなかった情報に出会ったり、一人では思いつかなかった発想が生まれたり、長く悩んでいた問題が解決したりすることがあります。

もちろん、AIがいつも正しいわけではありません。間違えることもあれば、何度説明しても思うような答えが返ってこないこともあります。

それでも、AIとの対話を重ねるほど、その可能性に驚かされるようになりました。

知りたいことを教えてくれるだけではない。一緒に考えることで、新しい何かが生まれていく。

私にとって、AIとのやり取りはそれほど価値のあるものになっています。

そして、自然とひとつの疑問が生まれました。

これだけ価値のあるやり取りを、その場限りで終わらせてしまっていいのだろうか。

AIとの対話を、使い捨てにしたくない

ChatGPTとの会話には、これまでに経験したことや、考えてきたことが数多く残されています。

仕事で直面した問題、解決までの試行錯誤、新しく得た知識、途中で変わった判断。何気なく始めた相談から、思いがけないアイデアにつながったこともあります。

それぞれは小さな出来事かもしれません。

でも、そうしたやり取りが積み重なることで、自分にとって大切な情報が増えていくのを感じています。

一方で、会話が増えるほど、過去の情報を探すことは難しくなります。

以前どんな話をしたのか。どんな方法を試して、最後にどうなったのか。

確かに記録は残っているはずなのに、必要なときに見つけられない。自分自身が忘れてしまっていることもあるでしょう。

それでは、せっかく積み重ねたものを十分に生かせません。

だからこそ、これらをきちんと記録し、守っていきたいと思うようになりました。

ただ保存するだけではなく、必要なときに探せて、元のやり取りを確かめられて、これからの仕事や新しい発想に役立てられる状態にしたい。

実際にforedoomでは、過去のChatGPT会話を取り出し、検索できるようにする実験にも取り組んでいます。

技術的な内容はLABで紹介していますが、その出発点はとてもシンプルです。

自分にとって価値のあるものを、失わずに残し、これからも使い続けたい。

この思いが、Knowledge Assetという考え方につながっていきました。

企業にとって、本当の資産とは何だろう

自分自身にとってAIとの対話が資産になるのなら、企業にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。

企業の資産と聞いて、まず思い浮かぶのは何でしょう。

現金や預金、土地や建物、設備など。会社の経営を支える、目に見えやすいものが多いと思います。

もちろん、技術やブランド、知的財産など、形のない資産も以前から存在しています。

ただ、私はこれからの時代、もう少し違ったものにも目を向ける必要があるのではないかと感じています。

それが、企業が日々の活動の中で積み重ねてきた知識や記憶です。

会社を運営していれば、毎日のようにさまざまな出来事があります。

顧客からの相談に対応する。新しい方法を試す。失敗して別の方法へ切り替える。何度も話し合い、ひとつの判断にたどり着く。

そうした経験は、どんな企業にも積み重なっているはずです。

しかし、仕事が終われば次の仕事へ進み、過去のやり取りはメールや資料、担当者の記憶の中に残されたままになることも少なくありません。

結果は残っていても、そこへ至るまでの経緯は失われてしまうことがあります。

ある判断が正しかったかどうかだけでなく、なぜ当時はその選択をしたのか。何を考え、どんな問題を乗り越えてきたのか。

それらは、その会社が時間をかけて積み重ねてきたものです。

お金を払えば、同じものをすぐに手に入れられるとは限りません。

私は、こうした経験や知識の蓄積にも、資産としての大きな価値があると考えています。

そしてAIが普及していくこれからの時代、その価値はさらに高まっていくのではないでしょうか。

人が変わっても、AIが変わっても

企業が事業を続けていく中で、働く人が入れ替わることは自然なことです。

長年勤めた社員が退職し、新しい担当者が仕事を引き継ぐ。

必要な資料や手順は渡せても、それまでの経験や判断の背景まで、すべてを引き継ぐのは簡単ではありません。

なぜその方法を採用しているのか。過去にどんな失敗があったのか。以前の担当者は何を大切にしていたのか。

そうした情報が失われることで、同じ問題にもう一度時間をかけたり、以前と同じ失敗を繰り返したりする可能性もあります。

もし、会社が積み重ねてきた知識や経験を、会社自身が持ち続けられたらどうでしょうか。

新しく入った人も、過去の経緯を理解したうえで仕事を始められる。以前の判断を参考にしながら、今の状況に合った新しい選択ができる。

そして、この考え方はAIにも当てはまります。

現在使っているAIが、数年後も同じサービス、同じモデルであるとは限りません。

より優れたAIが登場するかもしれませんし、仕事によって複数のAIを使い分けることが当たり前になるかもしれません。

そのたびに、これまで積み重ねてきた情報を失ってしまうのでは、あまりにももったいない。

人が変わっても、AIが変わっても、会社の資産は会社に残り続ける。

特定の社員やAIに閉じ込められるのではなく、必要なときに同じ元の情報へたどり着き、継続して活用できる。

私が目指したいのは、そんな状態です。

もちろん、過去の情報をそのまま使い続けることが正しいとは限りません。

以前の判断が、今では適切でなくなっていることもあるでしょう。

大切なのは、古い判断を変えられないようにすることではなく、なぜその判断が生まれ、なぜ変更されたのかを残していくことです。

成功だけでなく、失敗や撤退、考え方の変化も含めて、企業が歩んできた歴史として守っていく。

その積み重ねが、次の判断を支える資産になるのだと思います。

記録を残すだけでは、資産にならない

ただし、情報を大量に保存するだけで、その価値を十分に生かせるわけではありません。

どれだけ多くの資料や記録があっても、必要なときに見つからず、利用できなければ、単なる保管庫になってしまいます。

だからこそ、私がまず取り組みたいのは、企業が持つ情報を整理し、人やAIが必要なときに取り出せる状態をつくることです。

例えば、過去の業務記録や顧客対応、社内資料などが、それぞれ別の場所に保存されていたとしても、必要な情報へたどり着けるようにする。

そこから過去の経験を確認し、現在の仕事や新しい判断の参考にできるようになれば、情報の使い方は大きく変わるはずです。

ただ、ここでも気をつけたいことがあります。

AIが情報を取り出せることと、その内容を正しく理解できることは、同じではありません。

foredoom自身の実験でも、AIが元の会話を参照していながら、その意味を読み違えることがありました。

途中で提案された方法を、実際に採用した方法として扱ってしまう。まだ確認していない内容を、確定した事実として整理してしまう。

そうした問題がある以上、AIが出した答えを無条件に会社の知識として蓄積するわけにはいきません。

だからこそ、元の記録を失わず、必要なときに確かめられることを大切にしたいのです。

さらに、どの情報を誰が利用できるのか、何を正式な知識として扱うのかを、企業自身が管理できなければなりません。

Knowledge Assetは、単なるデータベースや便利な検索システムを指す言葉ではないと考えています。

企業が自分たちの積み重ねてきたものを守り、必要なときに利用し、未来へ引き継いでいけること。

その状態を実現するための考え方です。

自分の経験が、誰かの役に立つかもしれない

私がKnowledge Assetに可能性を感じているのは、自分自身や企業の中で情報を活用できることだけではありません。

AIとのやり取りを通じて得た経験を、ほかの人にも役立ててもらいたいという思いもあります。

例えば、自分が経験したトラブルの解決方法が、同じ問題に悩んでいる人の助けになるかもしれません。

ある人は解決方法だけを知りたいかもしれないし、別の人は、その方法にたどり着くまでの試行錯誤を参考にするかもしれません。

何に価値を感じるかは、受け取る人によって異なります。

だからこそ、発信する側が情報の価値を一方的に決めつける必要はないと思っています。

大切なのは、実際に経験したことを、できるだけ正確に、一貫した姿勢で伝えていくこと。

うまくいったことだけでなく、失敗や途中で判断を変えたことも、伝える意味があれば残していく。

まだ分かっていないことは、分かっていないものとして扱う。

そのうえで、何を参考にして、どう生かすかは、読んでくれた人が判断すればいい。

現在、foredoomでLABやJOURNALを発信しているのも、そんな考えの延長にあります。

もちろん、すべての情報を公開するという意味ではありません。個人や顧客の大切な情報は守りながら、共有できる経験を適切な形で届けていく。

自分にとって価値のあった出来事が、誰かの新しい発見や問題解決につながる。

それもまた、知識や記憶を資産として残していく意味のひとつだと思います。

お金やモノだけでは測れない、これからの企業価値

AIがこれからどこまで進化していくのか、正確な未来は誰にも分かりません。

ただ、AIが仕事のさまざまな場面に関わるようになるほど、企業がどのような情報を持ち、それをどう活用できるかが重要になっていくと感じています。

同じAIを使っていても、企業ごとに積み重ねてきた経験は違います。

顧客との関係、過去の判断、成功や失敗、仕事に対する考え方。

そうした蓄積は、他社が簡単に再現できるものではありません。

そして、それらを将来にわたって利用できるようになれば、企業の新しい強みになる可能性があります。

私は、これからの時代、知識や記憶という資産が、お金や設備以上に重要な意味を持つ場面が増えていくのではないかと考えています。

これまで企業が資産として大切にしてきたものに加えて、日々の仕事の中で生まれる知識や経験にも、もっと目を向けるべきではないでしょうか。

foredoom自身も、その仕組みを完成させたわけではありません。

過去の会話を検索できるようにしたり、AIが情報を正しく理解できるか検証したり。今はまだ、実現するための方法を一つずつ確かめている段階です。

それでも、目指したい方向は明確です。

AIとの対話を通じて、自分が得てきた価値を失わずに残したい。

そして、企業が長い時間をかけて積み重ねてきたものも、社員やAIが入れ替わることで失われるのではなく、次の仕事や新しい世代へ引き継げるようにしたい。

会社にとって、本当に価値のある資産とは何なのか。

その答えは、貸借対照表に並ぶ数字だけでは見つからないのかもしれません。

日々の何気ないやり取りや、小さな判断、成功と失敗の積み重ねの中にも、これからの企業を支える大切な価値が眠っている。

その価値を守り、未来に生かせるようにすること。

それが、foredoomの考えるKnowledge Assetです。

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